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事業・製品情報

デジタル分野向けの先端材料開発を加速。
スペシャリティケミカル事業部新設。

2021年9月 取材

新中期経営計画「INNOVATION25」に掲げた重点領域の一つ、デジタル分野向けの「先端材料」領域(以下D領域)は、スマート社会の進展などを背景に、先行き不透明な経営環境においても、当社の技術を生かし大きな成長を見込める分野です。D領域への事業展開を強力に推進するため、当社は2021年1月にスペシャリティケミカル事業部を新設しました。取り組みの詳細について、執行役員スペシャリティケミカル事業部長の島田昌和に聞きました。

島田 昌和

執行役員
化学品部門
スペシャリティケミカル事業部長

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新体制で開発・事業化を加速

当社は2021年2月に発表した新中期経営計画「INNOVATION25」において、「EHD(環境 / Environment、健康・衛生 / Health、先端材料 / Digital)」の3領域を重点領域に定め、事業活動に取り組んでいます。

D領域をより強力に推進するために立ち上げたのがスペシャリティケミカル事業部です。デジタルトランスフォーメーションが加速する中、これまで培ってきた技術を生かしながら先端情報技術分野で必要とされる技術や材料を創出し、事業として育成することがミッションです。

当事業部は、これまで製紙用薬剤や金属用洗浄剤など繊維加工以外の化学品事業を推進してきた「特殊化学品事業部」と、フッ素化成品や水系ウレタン樹脂などの新規用途展開に取り組んできた「未来創造室」を統合した組織で、中期経営計画をより早く確実に達成するために、それぞれの事業リソースを効率的に活用できる組織へ改編したものです。また、事業部内に事業開発・支援部を新設し、次世代を見据えた技 術・材料の事業化推進やD領域のグローバル展開を加速させる体制を整えました。

世界的メーカーなどへ着実に採用進む
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当社のマスキングオイルが加工工程薬剤として使われているフィルムコンデンサイメージ

D領域での事業拡大に向け、特に将来性を見込んでいる二つの取り組みを紹介します。

一つはフッ素化成品の展開です。フッ素化成品は耐化学薬品性や耐熱性に優れるなど物性が安定しているのが特長で、電子部品の加工工程など過酷な環境下で使用される特殊な用途向けの製品に適しています。既にフィルムコンデンサ(※1)の加工工程で使われるマスキングオイル(※2)や潤滑剤などで採用されており、今後さらに需要拡大を見込んでいます。

また、当社の合成技術を生かした新規材料開発も加速させています。例えば、5Gのみならず6Gといった次世代通信でニーズの高まっている高周波・低誘電材料をターゲットとし、高周波を通しやすく機能を阻害しない高機能フッ素系高分子等での採用を目指しています。

もう一つはデジタルデバイスの光学部品などに使用される様々な特殊樹脂および原料の技術開発です。デジタル分野で使用される樹脂は、例えば金属など異種材料との接着性、透明性、密着性など複数の機能が同時に求められることが多々あります。当社が開発した樹脂や原料はこうしたニーズに対応し、世界的にもシェアの高いスマートフォン・パソコン向け光学部品材料や液晶テレビ画面に使われる特殊なフィルム用などに採用いただいています。

企業姿勢と柔軟な対応力が強みに
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これらの技術・製品の開発、製造にあたり強みとなっているのが「製品を売るにあらずして技術を売る」という当社の創業時からの信条です。大量生産型のメーカーでは難しいとされる細やかな処方調整など、お客様と対話し柔軟な対応力でご要望に合わせた製品開発を行い、より付加価値の高いニッチなニーズ獲得に成功しています。さらに近年の国内外工場への設備投資によって製造・品質管理体制を強化し、対応までのスピードや適応力も大幅に向上しました。

D領域は今後ますます成長が見込める分野ですが、急速に変化していく市場に対応するにはスピードが重要です。そのため、当社では当領域での知見やネットワークを有するパートナーとの協働により開発を加速させ、共に成長を目指しています。

INNOVATION25では2023年にスペシャリティケミカル事業部として売上高40億円増(19年比)の108億円、D領域で20億円増(19年比)の65億円の目標を掲げています。既に2019年までほとんど売り上げのなかった光学部品材料向け特殊樹脂モノマーの販売量が急拡大するなど成果を上げており、視界は良好です。

「まだ世の中にない、当社にしかできない技術・製品開発を実現できる可能性が大いにある分野。大きな夢を持ってチャレンジしていきたい」と島田は話します。2025年には繊維化学品事業、化粧品事業に続く第3の柱へと成長させ、人々の暮らしをより豊かにするような高付加価値製品の創出・育成を通じてサステナブルな社会の実現に寄与していけるよう一層力を注いでまいります。

用語解説

(※1)フィルムコンデンサ
 電子基板の部品の1つで、絶縁体としてプラスチックフィルムを使用しているもののこと。コンデンサの中でも高性能・高精度用途で使用される。

(※2)マスキングオイル
 電子部品の加工処理時に材料を部分的に保護するために使用される薬剤のこと。

関連リンク

・フッ素化学品に関する記事 https://www.nicca.co.jp/productinfo/develop/fiber/post_3.html
・中期経営計画ページ https://www.nicca.co.jp/ir/plan.html