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事業・製品情報

韓国子会社ニッカ コリアに新工場が竣工。
需要の高まるフッ素化学品の増産体制を構築。

2020年3月 取材

2021年に創立50周年の節目を迎える当社韓国子会社ニッカコリアにおいて、2019年10月に新工場が竣工しました。繊維加工用薬剤の開発・生産でスタートした同社は、日華化学グループの重要拠点のひとつとして業容を拡大し、新工場ではフッ素化学品のマザー工場として、従来からの主力製品である撥水撥油剤(※)のほか、需要の高まる機能性フッ素化学品の増産体制を整えました。名誉会長の金と社長の森下に、新工場設立の経緯と、50周年の節目を迎えるにあたっての思いを聞きました。

金 敬栽

NICCA KOREA CO., LTD.
代表理事名誉会長

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森下 喜幸

NICCA KOREA CO., LTD.
代表理事社長

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これまでの歩み

ニッカコリアは、繊維加工産業が人件費等の関係で日本から韓国や台湾に移り始めた1971年に、韓国の三慶物産(現KOLON社)と当社との合弁会社として誕生しました。合成繊維の加工産地である大邱(テグ)市に工場があり、本社はソウルに置いています。

1991年からは国家プロジェクトとして、韓国の国立研究機関である韓国化学研究院との間で研究テーマの探索から技術開発、工業化(事業化)に至るまでの全プロセスに関して共同研究を進め、実績を築いてきました。「若手を中心に、合成から工場設備設計まで担える人材が社内に育っていることが当社の大きな強みであり、機能性化学品の合成でオンリーワンの技術を複数確立しています」(金)。

韓国撥水剤市場でトップシェア
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ニッカコリアの全景。左に見える5階建ての建物が新工場です。

同社が創業以来手がけている主力製品が繊維加工用薬剤です。上述の通り、韓国の国家プロジェクトとして開発を進めてきた研究テーマの中でも、特にフッ素系撥水剤はそれまで韓国では100%輸入に依存していましたが、同社が国産化を果たした経緯があります。現在は、韓国における繊維加工用撥水剤市場において約30%のシェアを占めており、トップシェアを誇っています。

撥水剤については近年、環境への残存性が懸念される物質を含むとして、世界的なアパレル・スポーツ用品ブランドを中心に「フッ素フリー」への転換が進んでいますが、当社グループはこうした動きが広がる前からフッ素フリー系撥水剤の製品開発・生産技術開発に取り組んできました。当製品の生産技術開発においてはニッカコリアと日華化学本社が連携して工業化を実現し、現在当社グループ内でのメイン生産はニッカコリアが担い、中国、アメリカ、台湾などのグループ海外各拠点に加え、メキシコ、インドなどのお客様を含め、10か国以上に製品を供給しています。

社長の森下は「ニッカコリアは韓国に根付いて50年近くの歴史があり、メイド・イン・コリアのブランド力が強みになっています」と話し、同社のフッ素系、フッ素フリー系いずれの撥水剤とも、優位性の高い技術として市場に受け入れられています。

フッ素化学品で新市場開拓をめざす

繊維加工用撥水剤の技術を応用するかたちで、現在新規事業として力を入れているのがフッ素化学品です。フッ素化学品は、韓国の主力産業である精密機器・半導体・ディスプレイ等の製造設備で使用される潤滑油・グリースをはじめ、化学薬品耐性や高温耐性に優れたスマートフォンやレンズなどに使用される防汚剤といった特殊な用途で使用される材料です。フッ化水素、フッ化ガス等の無機化学とは違い、有機化学であるフッ素化学品の生産を行っている企業は大変少なく、同社は独自の技術開発に成功し、韓国内ではこのような特殊用途向けとして唯一のフッ素化学品の生産工場となっています。

フッ素化学品の需要は、デジタルトランスフォーメーションの潮流とともに世界的に高まっています。特に通信網の5G化により、IoTやAIなどのデジタル技術の進化が加速し細分化されることで、新規ニッチ市場が数多く生まれてくると予想され、高付加価値なフッ素化学品と、繊維加工用薬剤市場で培ったお客様の要望にお応えするソリューション提案を両輪として、新たな市場開拓が期待されます。

変革のスタートラインに
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工場の竣工式では大邱広域市の李副市長にもご出席いただくなど、地域からも大きな期待を寄せられています。

今回の新工場の建設は既存の撥水剤市場を深堀りし、さらにフッ素化学品の新市場開拓に向けた増産体制を構築するという狙いがあります。

新工場竣工後の生産能力は旧工場の1.3倍となる年14,000トン。ニッカコリアの売上計画では、2018年実績の約36億円から、2025年には約60億円を見込んでいます。当社グループ内の他工場では行わないような難易度の高い反応を必要とする工場であることから、安全性向上と効率化のため、原料投入から反応管理までほぼ自動化された設備としており、24時間連続稼動体制を実現しています。

日華化学グループの長期ビジョン「INNOVATION25」において、フッ素化学品は重要戦略製品のひとつに位置づけています。会長の金はニッカコリアのこれまでの歩みを振り返り、「当社が今日、日華化学グループにおいてフッ素化学品のマザー工場としての役割を担っていることは、非常に誇らしいこと」とし、「グループ各社と連携し、また韓国の強い輸出産業と連動して、グローバルに市場拡大していきたい」と展望を力強く語りました。

用語解説

(※)撥水撥油剤
繊維加工工程の中で、繊維に水分や油分をはじく機能性を付与する加工薬剤