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事業・製品情報

生地表面に「ハスの葉」構造を再現。
フッ素系撥水剤と同等の撥水性を付与。

2018年3月 取材

フッ素化合物を使わない撥水剤 ネオシード


繊維業界では2000年代初頭から、特定のフッ素化合物に関して環境等への残留性が問題視されるようになり、多くの世界的なアパレル・スポーツ用品メーカーが2020年までに、製造工程の中からフッ素化合物の使用をゼロにする目標を掲げています。当社はこうした動きが起きる前から、フッ素化合物を使わない「フッ素フリー系撥水剤」の研究開発を続けてきましたが、その中でハスの葉の構造をヒントに誕生したのが「ネオシード」です。需要が高まる中で、さらなる開発や販促を担う二人に話を聞きました。

竹内 斉久

界面科学研究所 商品開発研究部
開発担当
繊維化学品開発担当部長

島田 紗緖里

化学品部門 化学品戦略企画室
プロモーション担当

ハスの葉の構造をヒントに開発
ハスの葉構造の再現イメージ図

表彰を受けた江守社長と研究開発担当者

ハスの葉は一見すると滑らかですが、よく見ると表面は微細な突起で覆われ、突起の表面にもナノサイズの凹凸が存在します。これらの突起や凹凸のすき間に空気が入り込むため、水はその"空気の層"によってはじかれるのです。
この原理を応用したのが「ネオシード」で、本格的に開発をスタートしたのは2004年のことです。優れた撥水性能を持つフッ素に替わる化学的イノベーションと、ハスの葉の構造をヒントとした物理的イノベーションを融合。何度も改良を重ねて性能を高め、近年、フッ素系撥水剤に匹敵する撥水レベルにまで到達しました。また、撥水加工後の生地物性(風合い・縫目滑脱抵抗性等)への影響も充分に配慮した製品設計を行ったことで、スポーツ・カジュアルアパレルを中心に広い分野での展開が期待されています。
こうした開発の歩みの中で2012年に取得した特許権は、2017年の近畿地方発明表彰(公益社団法人発明協会主催)において、最高賞である文部科学大臣賞を受賞しました。これは、世界的なニーズに対応した環境配慮型製品である点や、省エネルギーにも寄与している点が評価されたものです。

ハングタグでブランド力強化

2018年1月にはドイツで開かれた世界最大級のスポーツ・アウトドア・アパレル用品の業界向け国際展示会「ISPOミュンヘン2018」に4年連続で出展し、「ネオシード」の最新技術をアピールしました。フッ素フリー系撥水剤に対する業界の注目度は高く、現在、アパレルメーカーなどとの間でアウトドアジャケットをはじめ、具体的なアイテムの商談が進んでいます。 今後は「ネオシード」単体での優れた撥水性はもちろん、当社では精練や染色など繊維の加工工程で使用される薬剤も揃えていますので、これらと組み合わせることによって、さらに撥水性を向上できる点をPRして受注増につなげ、2020年にはグローバルで20億円の売り上げを目指します。 また、販売促進策の一環として、「ネオシード」で撥水加工された生地を用いたアパレル製品に付けられるハングタグを制作しました。今後、「ネオシード」を使用するアパレル・スポーツ用品メーカーに提案し、環境に優しい商品を選びたいと考えている消費者への認知度アップを目指していきます。これからもさらに技術をブラッシュアップして撥水性や風合い、各種性能を総合的に向上させていくと同時に販促活動にも注力し、「ネオシード」を誰もが知っているようなブランドに育てていきたいと考えています。

「花はす公園」に寄付

「ネオシード」を開発するにあたって着想を得たハスの葉への感謝を込め、花ハス生産量日本一を誇る福井県南越前町にある「花はす公園」に「ネオシード」の売り上げの一部を寄付いたしました。
今後も継続的に寄付を行う予定で、公園の保全に貢献してまいります。