事業・製品情報

撥水剤はスポーツウェアやカジュアルウェアなど、アパレル製品に広く使われています。従来は、撥水性能が非常に高いフッ素化合物を含む「フッ素系」の撥水剤が使われていましたが、2000年代以降世界的なアパレル・スポーツブランドを中心にサステナブル活動が活発化し、より健康と環境に優しい撥水剤を求める動きが急速に拡大しています。当社ではこうした動きが広がる前からフッ素フリー系撥水剤の開発を進めており、2007年にはフッ素フリー系撥水剤「ネオシード」シリーズ（※1）の本格販売を開始し、以降、機能性向上を目指して改良を重ねてきました。

特にカジュアルスポーツ・アウトドアウェアでは、着用時の快適性を損なわない柔軟な風合いが求められますが、フッ素フリー系撥水剤では「撥水性」を上げると「生地の風合い」が硬くなるといった、一方を向上させると一方が低下するトレードオフの関係が課題でした。当社では2015年に新たな開発プロジェクトを立ち上げ、従来は不可能と言われていたこの難題に挑戦し、さまざまな成分を評価していく中、撥水性を劇的に向上させながら風合いは損なわない画期的なシリコーン成分を発見しました。また、創業時よりオープンイノベーションを実践している当社は、さらなる技術向上を目指す中で、かねてからのビジネスパートナーであるダウ社（※2）との共同開発を開始しました。ダウ社のシリコーン技術と当社の界面科学技術を融合し、数百のサンプルを試した結果、2018年に「ネオシード NR-8800」が完成しました。

当製品は、撥水性能はもちろん、洗濯耐久性（※3）などの撥水加工後の生地物性への影響もクリアした上で、従来のフッ素フリー系撥水剤を加工した生地と比較し、ゴワつきがなく非常に柔らかい質感を実現した画期的な製品です。
「撥水剤においてさまざまな知見がある当社が技術を着実に積み重ねて完成した製品で、他社が簡単には真似できない性能を実現しているという自信があります」と開発担当者は語ります。

これらの性能がお客様に支持され、付加価値の高い製品として売上を順調に伸ばし、現在までに国内外のカジュアルスポーツ・アウトドアウェアに多数採用いただいています。さらに、2020年10月の「2020 R&D 100 Award」の受賞も追い風となり、現在も多くの問い合わせが寄せられています。
フッ素フリー系撥水剤の現在の世界市場規模は年間6,000トン・約50億円ですが、5年後には2倍近くに増加すると予想されています。当社は現在約15％のシェアですが、2025年には30％へ高めていく計画です。

アパレル産業は、世界規模で見ると人口増加や生活水準向上に伴い、まだまだ需要が拡大しより高機能な製品が求められる成長分野です。NR-8800は開発当初からグローバル展開を視野に入れ、日華化学（中国）（※4）をはじめとする海外グループ会社と連携し、各地のお客様からの要望や設備環境などに応じた総合的な製品開発を行ってきました。結果として、中国で好評をいただき、その知見を生かし現在では世界各地での販売が実現、さらなる展開を目指しています。今後は、ネオシードシリーズはもちろん、その他の繊維加工用薬剤においても一層の機能性向上に向けて改良を重ね、人と環境に優しい製品づくりを進めていくことで、繊維産業および社会のサステナビリティ向上に寄与してまいります。

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R&D 100 Award

米国「R&D WorldMagazine」主催の、世界的研究機関や企業が開発し過去1年間に実用化された製品・技術の中から最も優れた100件を選出して表彰するもの。2020年度の国内受賞はトヨタ自動車、豊田中央研究所、日立製作所と当社の4社。

（※1）「ネオシード」シリーズ(繊維化学品専用サイトへ)
　ハスの葉の水をはじく構造をヒントに開発した、当社で製造・販売しているフッ素フリー系撥水剤。

（※2）ダウ社
　1897年設立の米国ミシガン州に本社を置く世界的素材化学メーカー。

（※3）洗濯耐久性
　従来のフッ素フリー系撥水剤で課題となっていた、洗濯を重ねることによる撥水性能低下への耐久性のこと。

（※4）日華化学（中国）
　2002年、中国浙江省杭州市に設立した子会社（当時は浙江日華化学）。中国市場において薬剤の製造販売を主に手がけ、研究開発も行っています。

関連リンク

・当社繊維化学品専用サイト　https://nctexchem.com/jp/
・事業・製品情報「繊維化学品」https://www.nicca.co.jp/productinfo/fiber.html