インドの繊維加工用薬剤メーカーと業務提携。
南西アジアの巨大市場開拓を本格化。
2018年9月 取材
香港日華化学ダッカ事務所
バンガロールはインドの繊維加工産業の中心地
当社は2018年2月、インド南部の都市バンガロールに本社を構えるレジル社(※1)と業務提携契約を締結しました。レジル社はシリコン柔軟剤を主力にインド国内で着実な成長を続ける繊維加工用薬剤のトップメーカーの一つであり、当社では同社が構築している販売網などを生かし、南西アジア地域での販売を本格化させています。同事業を牽引する佐谷義寛と池端和彦に、インド市場への展開を決めた背景や手応え、今後の計画などについて聞きました。
佐谷 義寛
執行役員
化学品戦略企画室長
池端 和彦
繊維化学品事業部次長
兼 ビジネス開発部長
世界第2位の繊維大国
日華化学が南西アジアへの展開に注力する背景には、数十年先にわたって期待される市場性の高さが挙げられます。特に、その中心となるインドは、繊維加工用薬剤に関する市場規模が約800億円(日本の約3~4倍)と言われ、中国に次ぐ世界第2位の巨大マーケットが広がっています。とはいえ、従来はその多くが綿や基本的な合成繊維加工向けで、高機能な合成繊維を得意とする日華化学の製品が生かされる場面はあまりありませんでした。
しかし、近年その環境に変化が生まれてきています。ITを中心としたサービス産業を核に、インド経済は現在、飛躍的な成長を続けており、それに合わせて国民の所得が大幅に増加。生活にゆとりが生まれ、購買意欲の高い中間所得者層が拡大傾向にあります。そのような背景もあり、世界的なアパレルブランド、特にスポーツブランドのインド進出が加速中で、合成繊維加工のニーズも急速に高まっています。加えて、インドで加工された製品の主な輸出先である欧米のアパレルブランドでは環境保全の動きが強く、加工薬剤の中でもフッ素フリー系撥水剤など当社が力を入れる「サスティナブル製品」に対する需要が高まりを見せています。
さらに、「人件費や環境対応コストの増大から、中国以外の国に製造拠点を持つ"チャイナプラスワン(※2)"が進んでいます。今は新たな進出先としてベトナムが注目されていますが、その次の候補地としても南西アジアは有望です」(佐谷)。また、インドの人口(約13億人)は近い将来、中国を抜いて世界一になることが確実視されており、海外での販路拡大を目指すにあたって最も注目されるエリアの一つと言えます。
互いに高め合えるパートナー
中国に引けを取らない大規模な縫製工場。インドには繊維加工の巨大マーケットが広がっています
展開にあたって提携するレジル社は、インド国内の繊維加工用薬剤メーカーとしてはトップ3に入り、幅広い販売ネットワークを構築しています。同社は、銀のナノ粒子を使った抗菌剤の開発など、新領域の研究にも積極的で、その技術力やイノベーションに対する姿勢などには目を見張るものがあり、「学ぶ点が多く、ともに高め合えるパートナー」(佐谷)です。
今回締結した契約では、レジル社にインドとスリランカ、日華化学に日本や日華化学グループの拠点がある韓国、中国、ベトナム、タイ、インドネシア、アメリカなどで、互いの製品の独占販売権を付与。当社では、南西アジアでの販売を軌道に乗せるため、レジル社の技術者を当社に招いて製品に関する研修を実施したり、ほぼ毎月当社から営業と技術スタッフをレジル社に派遣したりするなど、二人三脚でインド市場での販売強化に取り組んでいます。「レジル社側でも重点的に売り込む企業を選定するなど、両社が知恵を出し合い、綿密な販売戦略を推し進めています。まだ踏み出したばかりですが、十分な手応えを感じています」(池端)とのことで、目標を上回るペースで順調に売り上げを伸ばしています。
このように好調なスタートを切った南西アジアでのビジネスをより活発化していくため、この秋からはインド国内で当社製品の現地生産に向けた準備に着手する予定です。ゆくゆくは、原料の調達から製造、販売までの一貫した体制の構築も視野に入れており、コストやスピード、サービスはもちろん、インド市場向け製品の共同開発など、あらゆる面を一層強化し、市場開拓に向けてアクセルをさらに強く踏み込んでいく考えです。
用語解説
(※1)レジル社
1994年設立。従業員数は約350名。綿用を中心とした繊維加工用薬剤の製造から販売までを担っています。
(※2)チャイナプラスワン
中国への集中投資によるリスクを回避するため、中国以外の地域にも拠点を構える経営戦略のこと。
製造業を中心に、東南アジアや南西アジアへの進出が加速しています。