HOME  >  事業・製品情報  >  イノベーションストーリー  >  機能化学品  >  オープンイノベーションの先行事例に。光硬化型ウレタン樹脂を使った木材用塗料を3社共同開発。

事業・製品情報

オープンイノベーションの先行事例に。
光硬化型ウレタン樹脂を使った木材用塗料を3社共同開発。

2019年3月 取材

日華化学の研究拠点となる「NICCA イノベーションセンター(NIC)」の開所を機に、一気に実用化が進んだ技術があります。それが、「光硬化型ウレタン樹脂」です。NIC内で使用されている、長さ7mのハイテーブル、当社技術を紹介する展示台、応接室のテーブルなどには福井県産の杉が使われており、その保護材として、オフィス家具メーカーの㈱オカムラ(本社:横浜市)、木工塗料専門メーカーの大谷塗料㈱(本社:大阪市)と共同開発した光硬化型ウレタン樹脂を使った塗料が用いられています。実用化に挑んだ二人に話を聞きました。

田中 宏和

未来創造室 機能ポリマー部
グループリーダー

木部 佳延

界面科学研究所 商品開発研究部
ウレタン開発グループ 主席

多彩に活躍するウレタン樹脂

ウレタン樹脂は、数千個以上の原子からできる分子量の大きな高分子(ポリマー)の一種で、原料の組み合わせによって柔らかくしたり、硬くしたりするなど、多岐にわたる特徴を付加できます。この性質を生かし、ウレタン樹脂は、自動車、建材分野向けなどの塗料や接着剤として、自動車シート、スポーツシューズなどに使用される人工皮革、合成皮革、またアパレル繊維製品など、幅広い用途に使われています。
当社では、他社に先駆けて約30年前から水系ウレタン樹脂の研究開発に取り組み、国内トップメーカーとして展開しています。

光で瞬時に皮膜を形成

今回開発した光硬化型ウレタン樹脂の最大の特長は、ウレタン樹脂の加工時間が圧倒的に短いことにあります。主に保護材(コーティング材)として使われるウレタン樹脂は、有機溶剤や水などの液体に分散させているものが多く普及していますが、ウレタンの皮膜を形成するためには、塗った後で有機溶剤や水を揮発させる必要があり、加工に時間がかかります。対して、光硬化型ウレタン樹脂は文字通り光(紫外線)を照射するだけでよく、しかも瞬時に固着させることが可 能です。 加えて、人工皮革向けを中心に開発してきた当社のウレタン樹脂は、表面を守る高い耐衝撃性、物性変化が起きにくい耐薬品性だけでなく、適度な柔軟性も兼ね備えています。この特性は、今回の光硬化型ウレタン樹脂に引き継いでおり、保護材として使う際に大きな効果を発揮しています。 その主な対象のひとつである木材は、温度や湿度の影響を受け時間の経過とともにどうしても歪みが生じてしまい、柔軟性のないウレタン樹脂の場合その変化に対応できず、割れてしまいます。当社の光硬化型ウレタン樹脂は、この課題を解決しており、木材の変化に合わせて柔らかく伸びるのが特長です。また、天然由来の原料を使っている点も特長の一つで、環境・安全に配慮した製品となっています。

NICが実用化のきっかけに

NIC1階のガーデンスクエアのハイテーブルに光硬化型ウレタン塗料を活用。杉の風合いを美しく残しながら、高い耐久性や衝撃性を実現しています

光硬化型ウレタン樹脂の研究・開発は約4年前にスタートしました。既に市場には光硬化型ウレタン樹脂そのものはありましたが、当時は硬く割れやすいものばかりで、当社の技術を生かした柔らかく伸びる樹脂は、高機能を求めるお客様向けに商機があると考えたのがきっかけでした。そして、2016年には数種の光硬化型ウレタン樹脂の販売を始め、自動車、建材、フィルム等の分野に展開を図ってきた中で持ち上がった案件が、今回の共同開発でした。 それは、NICの開設にあたってオフィス家具に地元産の杉を使う計画があり、その保護材として光硬化型ウレタン樹脂を生かせないかとのアイデアが浮かんだことから始まりました。しかし、プロジェクトが始動したのは、NIC完成のわずか数カ月前。この短期間で実用化するのはかなり難しい状況でしたが、それを成功に導いた鍵はオープンイノベーションでした。オフィス家具メーカー・オカムラの木材加工技術と、オカムラの呼びかけに応じた木工塗料専門メーカー・大谷塗料の木材塗料化技術、それぞれの専門家が、最終的な製品を具体的にイメージしながら開発にあたったことで、今までにない開発スピードで製品化にこぎ着けることができたのです。 NICオープンから1年あまり。こうして完成したハイテーブルは昼食時になると多くの社員でにぎわい、当社のさまざまな技術を発信する展示台も多くのお客様に好評をいただいています。もちろん、光硬化型ウレタン塗料で加工された天板には傷一つありません。NICを訪れた際にはぜひご覧いただき、当社の誇る新たなウレタン樹脂技術にもご注目いただければと思います。