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環境に優しい高付加価値技術と「夢工場」の実現で ニーズが高まる「水系ウレタン」事業を推進。

日華化学は、「世界中のお客様から最も信頼されるイノベーション・カンパニー」を目指し、長期経営計画「INNOVATION25」の達成に向けた戦略を推し進めています。計画の中で、将来の日華化学を担う重要戦略製品のひとつに位置づけられているのが「水系ウレタン樹脂」で、本年5月にはメイン生産拠点として鹿島工場第2工場が竣工しました。
ウレタン事業の最前線について、化学品部門長として事業推進の指揮をとる片桐進と、プロダクション部門長として化学品の生産拠点を統括する三井彰弘に聞きました。

取締役 常務執行役員
化学品部門長

片桐 進

執行役員
プロダクション部門長

三井 彰弘

広がるビジネスチャンス

──水系ウレタン樹脂とはどのような素材なのですか。

片桐●ウレタン樹脂は、わたしたちの生活の身近なところでクッション材や断熱材、塗料、接着剤、人工皮革など、さまざまにかたちを変えて使われている素材です。原料の組み合わせによって、柔らかくしたり硬くしたりと多彩な機能を持たせることができます。
ウレタン樹脂は従来より有機溶剤(トルエン、ジメチルホルムアミドなど)を使用した「溶剤系ウレタン樹脂」が主流ですが、人体や環境に対する安全性に懸念がもたれています。健康・環境への配慮や法規制強化が進む中でニーズが高まってきたのが、当社が得意とする有機溶剤を含まない「水系ウレタン樹脂」です。

──ウレタン樹脂市場の動向を教えてください。

片桐●ウレタン樹脂市場は約10兆円規模で、そのうち水系ウレタン樹脂は900億円を占めており、今後さらなる成長が期待できます。
近年、ウレタン樹脂を使用するメーカー各社が、有害化学物質の排出をゼロにすることを目標に掲げています。目標達成のためには、各工程の製造工場で新たな設備投資によって環境負荷を減らすという選択肢もありますが、それよりも原料を一新する、すなわち有害化学物質を安全性の高い代替物質に切り替えていこうという動きが世界的なトレンドとなっています。そして環境問題に熱心な欧米だけでなく、アジアでも有機溶剤に対する規制強化が始まり、水系ウレタン樹脂を使用した製品展開が進んでいることから、ビジネスチャンスは広がっています。
こうしたハイエンド層を狙う当社のシェアは今現在1%で売上も約10億円に過ぎませんが、2025年には40~50億円を目指しています。

先駆的な取り組みで業界をリード


カーシートやシューズなど身近なところで使われているウレタン樹脂

──ウレタン事業における日華化学の強みは何でしょうか。

片桐●当社では40年近く前から、コア技術である乳化分散技術と有機合成技術を駆使して水系ウレタン樹脂の研究開発を積み重ねてきました。環境や健康に対する社会的な要求が強まる中、溶剤系ではなく水系へのニーズがますます高まっています。こうした背景から、水系ウレタン事業を当社の長期経営計画「INNOVATION25」において、重要戦略のひとつに位置づけています。 現在は主にカーシートやソファ、シューズ、バッグなどのファッションアイテムに使用される人工皮革用の水系ウレタン樹脂を製造・販売しています。人工皮革は、ナイロンやポリエステルを素材とした不織布にウレタン樹脂を含浸させて固めることで作られます。当社の技術力の代表的な例を挙げると、カーシートでは耐磨耗性、耐衝撃性、抗張力に優れるなどの「機能性」に加え、滑らかな肌触りや適度な柔軟性など「風合いの良さ」なども実現しています。また、アパレルでも快適な着心地と高級感、意匠性を並立させるなど、お客様のニーズに合わせた水系ウレタン樹脂を設計することはもちろん、染色、撥水、防炎といった仕上げ処理など社内の他の技術と組み合わせてトータルソリューションを提供できることが、私たちの大きな強みとなっています。

鹿島工場第2工場が竣工

──鹿島工場第2工場の立ち上げと、水系ウレタン樹脂の生産体制について教えてください。

三井●当社ではこれまで、水系ウレタン樹脂は主に鯖江工場で生産を行ってきましたが、大量受注・生産に対応できる体制の確立と、国内の生産機能の集約を目的に計画したのが鹿島工場第2工場(以下、新工場)です。新工場は2018年4月に着工し、2019年5月に竣工しました。地上5階建てで延べ床面積は3,636㎡、水系ウレタン樹脂のほか、界面活性剤の原料となるエステル化製品などを生産し、生産能力は年間5,000tです。

新工場の完成と製法の見直しにより、水系ウレタン樹脂の生産能力はこれまでの約4倍へと大幅にアップしました。現在はテスト生産を続けていますが、今後本格生産がスタートし、さらなる生産量の拡大が見込まれた際には、必要に応じてロボットやIoTなどの省力化・自動化設備を導入するなどして、一人当たりの生産性をアップしていきたいと考えています。
なお新工場の稼動に伴い、老朽化した関東工場の生産を停止し、国内の生産拠点を鹿島工場と鯖江工場の2拠点に集約したことで、工場間のモノやヒトの移動が減り、全体として業務効率がより高まりました。

「夢工場」を目指して

5月に竣工した鹿島工場2工場外観

──新工場のコンセプトを教えてください。

三井●近年、製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。環境に優しい工場が求められ、消費するエネルギーの削減や排出される環境負荷物質の削減など、各種規制が強化されています。また当社では顧客ニーズが高度化し、多品種生産や細かな仕様変更へのスピーディーな対応が欠かせない状況です。一方で、関東工場をはじめとする生産拠点では、場所によって作業動線が複雑だったり、社員の負担が大きかったりという課題がありました。
より効率的で高品質なものづくりの追求と、より安全で働きやすい作業環境の整備は、当社グループが持続的な企業成長を目指す上での両輪となります。こうしたことから新工場のコンセプトは、社員が働くことに夢や喜び、誇りを見出せる「夢工場」の実現としました。

──「夢工場」に盛り込んだものは何ですか?

三井●現場の社員を中心に夢工場委員会を組織し、具体的な姿を検討する中で明確になったのが「Plant ZERO」というビジョンで、これは、①人の移動②品質不良③3K環境④設備トラブル⑤廃棄物の5つの"ZERO"を目指していくものです。新工場の設計にあたっては、効率的な人員配置と動線の確保、生産ラインの高度化、設備更新に対応できるフレキシビリティの確保、構内物流のオートメーション化、排水処理設備の増強などにより、"Plant ZERO"にできる限り近づけました。
完成した新工場を見渡すと、最新の設備を備えた環境で、社員皆がモチベーションを高く持ち、生き生きと働いてくれています。

高付加価値分野で勝ち抜く

──「夢工場」のコンセプトは、全社的に拡大させていくのでしょうか。

三井●夢工場は当社グループのこれからの生産体制を象徴するモデル工場です。働きやすく安全・安心な作業環境を整えたことで社員満足度が高まり、年齢や性別を問わず優秀な人材の確保と定着が可能になると実感しています。このことは、より高品質で効率的なものづくりにつながり、顧客満足度の向上へつながっていくと期待しています。
新工場の完成はゴールではなく、当社全体が夢工場を実現するためのひとつの通過点です。新工場のコンセプトづくりや工場稼働後の実践を通じて得たノウハウの一部は、ブラッシュアップしながら、鯖江工場や海外工場へと応用展開していきます。夢工場は、当社の水系ウレタン事業を加速させ、国際競争の中で勝ち続ける原動力となるでしょう。

──今後どのような戦略で水系ウレタン樹脂のシェア拡大を図っていくのでしょうか。

片桐●新工場の誕生により、水系ウレタン事業を推進していく供給基盤が整いました。競合他社は大量生産することを基本とした汎用品をターゲットとしているのに対し、当社は高付加価値分野、ハイエンド製品に焦点を当てています。今後は人工皮革以外の用途でも、高い技術レベルに裏付けられた高付加価値を訴求し、環境意識の高い世界のビッグブランドに納得し、選んでもらえるようなアプローチをしていきたいと考えています。
目指すは、得意分野を絞り込んで国際的に評価を得ていく「グローバル・スペシャリティ・ニッチ」です。当社が蓄積した高い技術力をもってすれば、それは実現できると確信しています。ぜひ今後にご期待下さい。