HOME  >  事業・製品情報  >  イノベーションストーリー  >  メディカル  >  確かな技術力で医療器具向け「洗浄剤」を展開。高付加価値市場で存在感を高める。

事業・製品情報

確かな技術力で医療器具向け「洗浄剤」を展開。
高付加価値市場で存在感を高める。

2019年9月 取材

日華化学では化学品事業の一つとして、医療器具用の洗浄剤や消毒剤を製造、販売しています。これは当社が業務用クリーニング薬剤や金属用薬剤の開発で長年培ってきた技術を掛け合わせて生まれた製品で、2012年に研究開発と販路開拓を本格化し、後発での市場参入にもかかわらず右肩上がりで業績を伸ばしています。

高木 俊夫

界面科学研究所
商品開発研究部
クリーニング&メディカル開発担当部長
兼 メディカル開発グループリーダー

中村 尚良

メディカル開発グループ
サブリーダー

技術とサービスに高い評価

医療器具の中には注射針のように使い捨てにするものと、メスや鉗子(かんし)(※1)、クーパー(※2)、ピンセットなどのように、使用後に洗浄・消毒・滅菌をして再利用する器具があります。後者は主に専用の機械を使用して洗浄しますが、当社ではこの際に用いられる洗浄剤や消毒剤を開発、製造し、主にODM(※3)で供給しています。供給先は医療用洗浄機メーカーや海外製の洗浄機を輸入販売する商社、医療器具洗浄の受託会社などです。後発での市場参入ということもあって、現在の推定シェアは約3%にとどまっていますが、供給先の数も、1社当たりの取引額も着実に増加しています。
市場において当社が存在感を増している要因は、①医療器具に付着した血液をしっかりと落とす「洗浄力」、②ステンレスやアルミ、真ちゅうなど医療器具に使われている素材への悪影響や劣化を抑制する「腐食防止性」、③洗浄機の故障の原因となる起泡を抑制する「抑泡・消泡性」、④長期にわたって品質が変わらない「品質安定性」等を兼ね備えた製品づくりにあります。これら4項目を満たすことができるのは、何よりも当社が誇る界面科学技術があるからです。
また、化粧品、医薬部外品も含めたグループ全体を統括する品質保証体制が構築されていることや、きめ細かなアフターフォローも高評価を受けています。特にアフターフォローの面では、同じ洗浄剤と機械を使っても洗浄結果に影響を及ぼす水質分析、洗浄時のトラブル要因分析や、しっかりと洗浄できているかどうかを数値化して評価するサービスを提供しているほか、洗浄処方や環境を踏まえたアドバイスを行っており、好評を得ています。加えて、化粧品の開発部門や海外の研究所の存在も、当社の豊富な知見や高い技術力の裏付けとなり、顧客の多様なニーズに応える上で強みとなっているほか、東証一部上場企業であることも取引先にとって安心感につながっています。

医療分野でさらなるシェア拡大を

そもそも当社が医療器具洗浄分野に進出したのは、ある製薬メーカーからの要請に応じて、1996年に医療器具を浸漬させて使うタイプの洗浄剤を製造したことがきっかけでした。この際、ベースとなったのが、当社が以前から製造していた業務用クリーニング向けの殺菌消毒剤です。これに金属用薬剤に用いられていた技術を組み合わせ、洗浄剤の開発に成功しました。続いて2004年には内視鏡用の洗浄剤を開発。2012年には医療器具洗浄分野の市場開拓を本格化させるため、専門の部署を立ち上げました。
当初は医療器具の洗浄に関するノウハウが少なく手探りの状態でしたが、「知らないことを恥ずかしいと思わず、競合する会社をはじめ、知見がある人にとにかく教えを請いました。試作品ができた後も洗浄機のモデルや評価の仕組みを作ることに苦心しました」(中村)と振り返るように、苦労を重ねながらも着実に実績を築いていきました。
人の命にも関わりかねない医療器具洗浄分野は高い技術力が求められる高付加価値市場であり、当社の技術をより活かせる可能性が大きく広がっています。より優れた洗浄剤の開発を目指し、大学などとオープンイノベーションを進めようと準備を始めています。
また、今後は「透析装置に関連するものなど、医療器具洗浄分野でもまだ手がけていない洗浄剤のほか、除菌剤など病院内の環境衛生の向上に寄与する製品群の開発も視野に入れています」(高木)と話し、新たな製品ラインナップの拡充、さらには医療の安心・安全への貢献に向けて積極的に挑んでいます。

用語解説

(※1)鉗子
 はさみのような形状で血管をはさんだり、組織をつまんだりする手術器具。

(※2)クーパー
 外科手術用のはさみ。

(※3)ODM
 Original Design Manufacturingの略で、相手先のブランド名で剤のレシピをはじめとした製品設計から製造までを一貫して手がけること。