抗菌防臭剤「ニッカノン」に抗ウイルス効果。
衛生関連製品の開発・事業化を推進。
2020年9月 取材
今年4月、30年以上にわたる当社のロングセラー製品である繊維加工用抗菌防臭剤「ニッカノン」に抗ウイルス効果があることを発表しました。様々な素材への抗ウイルス効果付与が期待され、発表以来多くの分野から多くの問い合わせが寄せられています。社会的ニーズが高まる衛生関連製品の開発・事業化を効率的かつ迅速に推進するため、8月には「生活・環境衛生事業開発室」を発足しました。同室長の古市とニッカノンの開発に携わる柘植に話を聞きました。
古市 伝
生活・環境衛生事業開発室長
兼 山田製薬株式会社 取締役副社長
柘植 好揮
界面科学研究所 商品開発研究部
繊維化学品開発3グループ
サブリーダー
「衛生意識」の変化に応える
当社では、長年販売を続けている当社繊維加工用抗菌防臭剤「ニッカノン」の抗ウイルス効果を検証した結果、加工した繊維上のウイルス(ATCC VR-1679(エンベロープタイプ))の数が2時間で99.9%以上減少することを確認しました。この結果を4月にプレスリリースしたところ、既に肌着や、コートなどのアウター、マスクに内蔵されるフィルターへの採用が始まったほか、ソファやカーテン、シーツ、医療用ガウンなど幅広い用途への加工用として、また、繊維加工分野のみならず、これまでは取引のなかったようなさまざまな分野からもお問い合わせを頂いています。
8月には「生活・環境衛生事業開発室」を発足し、事業を横断したメンバーで構成する生活・環境衛生事業開発プロジェクトを立ち上げました。これにより、抗菌・抗ウイルス剤や山田製薬が製造等を行う手指消毒剤など、これまで複数の部署やグループ会社が個別に手がけていた生活・環境衛生に関する事業に横串を刺し、製品開発や販路拡大を加速させてまいります。
さらに11月には社内で抗ウイルス性能を評価できる試験設備の稼働を開始します。これまで時間を要していた外部機関での評価を社内で実施することで、お客様の要望に対して迅速かつ柔軟に対応できる体制を整え、今後さらに需要を取り込んでいく考えです。
抗菌性と安全性の両立で支持拡大
ニッカノンは、繊維加工の仕上げ工程で使用される抗菌防臭剤として当社が業界に先駆けて開発し、1987年から販売を続けている製品です。その特徴として、菌の増殖によって発生する汗臭や部屋干し臭を抑える効果があり、タオルや肌着等に広く加工されています。
日本国内のほか、アジア諸国で展開する日系アパレル企業向けが販路の中心で、約50%とトップシェアを誇ります。今年度からは、欧米で展開するアパレル企業向けに、欧米の法規制に合わせた抗菌防臭剤の販売も開始しました。
多くの競合品がある中で高いシェアを獲得している理由は、通常相反する抗菌性と安全性を高いレベルで両立させていることです。開発を手がける柘植は「当社では独自に開発した化学構造によって二つの性能をバランスよく実現しています。高い抗菌性がありながら、皮膚障害やアレルギーを起こさないかなどの各種安全性試験をパスしている上、発売から30年以上健康被害に関するクレームは一度もなく、お客様に安心して使っていただける製品です」と話します。
また、風合いや耐洗濯性といった他の物性を損なわずに抗菌性を付与できるよう、素材に合わせて他の繊維加工用薬剤を組み合わせた独自の処方を提案できる点も、広く支持されている理由の一つです。これは、お客様との対話を大切にしながら数々の処方を作り上げてきた成果であり、長年蓄積してきた知見を活かした提案は抗菌・抗ウイルス剤としてのシェア拡大につながると考えています。
用途拡大とさらなる機能向上へ
抗菌・抗ウイルス剤の市場は昨年10数億円程度でしたが、2022年には約2倍以上に拡大すると予想されており、当社では同年に20億円強の売上目標を掲げています。
「今後は繊維加工用としてはもちろん、前例にとらわれず幅広く用途拡大の可能性を探っていきたい」と話すのは生活・環境衛生事業室長を務める古市です。従来の分野にとどまらず、さまざまな分野へ展開していくとともに、機能面においてもウイルス減少の即効性や効果を高めるなどの研究開発に取り組むことで、人々がより安心して暮らせる衛生的な生活環境づくりに貢献してまいります。
関連リンク
・当社繊維化学品専用サイト https://nctexchem.com/jp/