水系ウレタン樹脂の開発最前線


トータル技術で“水系ウレタン樹脂”のトレンドに応える。

繊維加工剤や接着剤、塗料の材料として幅広く用いられている「ウレタン樹脂」。この分野でいま進行しているのが、「溶剤系」から「水系」への“チェンジ”です。 人体や環境に悪影響を与える揮発性の「有機溶剤」を使わない製品を――そんなお客さまのニーズに応えるためには、高度な技術と長い試行錯誤が必要でした。業界トップの水準を誇るNICCAの「水系化」技術。その開発最前線をご紹介しましょう。

水系ウレタン樹脂の開発者の声

研究開発本部
国際技術開発部
GPM 西野正和
(2009年12月まで研究開発本部 高分子グループ)

「ウレタン」はとても応用用途の広い化合物です。 自動車のバンパーや家電製品、人工皮革にも使われています。クッション材にもなれば、塗料にもなる。フィルムのような膜にも加工できる――。
しかしひとつ問題がありました。それは加工のために使う「有機溶剤」です。 有機溶剤の代わりに「水」を使えないか。このテーマに日華化学は20年にわたって挑んできました。 新しい「剤」や「材」の開発、加工のためのレシピの工夫、独自開発の設備や装置・・・これらのトータル技術によって、高性能な「水系ウレタン樹脂」を提供できるようになったのです。

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Answer
ウレタン樹脂とは?

身近なところで使われているウレタン
ウレタン樹脂の主な用途
「ウレタン樹脂」は私達の生活や産業のありとあらゆるところで幅広く使われています。
身近なところでは、自動車、電化製品、寝具や家具などのクッション材や断熱材、あるいは建築、車、木工といった分野のさまざまな塗料に。各種素材を貼り合わせる接着剤として。衣類や靴、鞄などファッションの分野でも、人工皮革や靴底などにも用いられています。
イソシアネート、ポリオールと呼ばれる原料の組み合わせによって、硬いものにでも柔らかいものにでも、ブロックのような形状にも膜のようなものにでも、自由自在に加工できるのがウレタン樹脂の特徴です。
使われる目的に応じて弾力性や柔軟性、伸縮性を付与したり、各種素材を接着させたり、硬さ・強靭性に優れたコーティング剤など、さまざまな性能を作り出していくことができます。
開発の経緯

ウレタン樹脂を様々なものに加工するためには、ウレタンをいったん液状にして型に流し込んで加熱したり、塗布するなどしなくてはなりません。液状にするために使われていたのがトルエンやジメチルホルムアミドなどの「有機溶剤」です。
こうして液状化されたウレタンは「溶剤系ウレタン樹脂」と呼ばれています。
例えば人工皮革では、不織布へ溶剤系ウレタン樹脂を浸み込ませ、加熱して有機溶剤を揮発させることで不織布にウレタン樹脂を固着させます。塗料では、刷毛,スプレーなどで基板に塗装し有機溶剤を揮発させることで、色成分がウレタン樹脂とともに定着します。接着剤も同様に有機溶剤を揮発させた後、素材を接着させます。

ところが今日、この有機溶剤が問題視されるようになってきました。
ウレタン樹脂に用いられる有機溶剤であるトルエンやジメチルホルムアミドなどは、そのほとんどが有害であり、「大気汚染」や「シックハウス症候群」などの原因とされるVOC(揮発性有機化合物)そのものだからです。人が大量吸引した時には意識喪失などの危険もあります。
人に対する安全性の面でも、また環境への影響の面でも、有機溶剤を用いない「水系ウレタン樹脂」へのニーズが世界的に高まっているのです。

有機溶剤を使わない「水系ウレタン樹脂」を開発する――そのためにはウレタン樹脂を「水」に溶かさねばなりません。
ウレタン樹脂を水に溶解する方法として、以前より知られてきたのが「親水性」成分をウレタン樹脂に組み込む方法です。しかし親水性成分は固着した後でも、水に濡れるだけで剥がれ落ちたりします
「水に溶けても、固着した後は水に溶けない」、この矛盾を解決する必要があります。

ここで取り入れたのが、日華化学が得意とする「界面活性剤」を用いた“乳化分散技術”でした。
通常、水と油は混じりませんがここに界面活性剤を混合すると、油が界面活性剤に包まれ、水中に「粒子」として分散した状態になります。この原理を応用したのです。
水に溶けないウレタン樹脂を、乳化分散技術を用いて水中に「粒子」として安定に存在させる、ここに日華化学の技術が発揮されたのです。

ウレタン粒子イメージ

 
NICCAのものづくり力

日華化学では、お客さまからのニーズに応じて様々な「水系ウレタン樹脂製品」を開発しています。この自在なものづくりを可能としているのは、次のような技術です。

1、ウレタン樹脂をつくる技術
ウレタン樹脂はハードセグメントと呼ばれる硬い成分とソフトセグメントと呼ばれる柔らかい成分で構成されます。それらの成分を調整することで、弾力のあるものや粘着性のあるものまで自在につくることができます。日華化学の水系ウレタン樹脂は、各分野のニーズにあった樹脂設計はもとより、耐久性、密着性に優れた性質に特長があります。

2、界面活性剤の技術
ウレタン樹脂を水に乳化分散する技術で、日華化学が最も得意としています。特殊な界面活性剤を用いることで、ウレタン樹脂といった高分子材料を極めて少ない界面活性剤量で安定的に乳化分散でき、また分野に応じ求められる粒子径制御技術は業界No.1といえます。

3、生産技術・生産設備装置開発技術
目指す性能を持つウレタン樹脂をつくるには、ウレタン反応制御、乳化工程における熱や圧力、時間などの調整などシビアな生産技術と品質管理が必要です。また専用の機器も必要です。それらもすべて自社で開発しています。業界トップの水準を誇る「水系化」技術の最大のポイントといえます。 これらの技術が結集することで、目指す性能の水系ウレタン樹脂を自由自在に作り出すことができるのです。

日華化学の特長は、お客さまのニーズに合ったウレタン樹脂を提案するだけにとどまりません。樹脂加工の処方の提案から、他の様々な工程薬剤の提供も含め、トータルにお客様をサポートできることが日華化学の何よりの強みです。
例えば人工皮革用のウレタン樹脂の場合、手ざわりや柔軟な風合い、不織布の摩耗性や引裂強度とのマッチングなど、極めて微妙な性質が要求されます。こうした課題に対し、樹脂の組成や水中に分散している粒子の大きさを最適化した製品をお届けすることはもちろんのこと、不織布内にウレタン樹脂を均一に固着させる加工技術をはじめ、染色や防炎、撥水といった仕上げ処理のための薬剤やその使用方法など、総合的なソリューションを提供しているのです。

 
 
今後の開発

「水系」化への期待が高まる中、しかし接着剤や塗料の分野ではまだまだ「溶剤系」が主流です。それは乾燥した後の定着性や強度において、水系の性能がまだ溶剤系に及ばないからです。塗料の分野で水系は、まだ16%程度を占めるに過ぎません。しかしそこには大きな可能性が潜在しています。「溶剤系に優る性能の水系ウレタン樹脂の開発」――日華化学はトータル技術で、その可能性にチャレンジしています。

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