開発最前線

ポリエステル染色工程の“永遠の課題であるオリゴマーの除去”を解決。

ポリエステル繊維――さまざまな衣料品に使われている身近な繊維ですが、その製造工程には、これまでどうしても解決できない大きな問題がありました。染色工程で発生する物質“オリゴマー”。染色トラブルの原因となるこの物質を除去することは、業界の「永遠の課題」と言われてきました。4年にわたる研究開発の結果、日華化学は世界初となるオリゴマー除去剤の開発に成功しました。
開発者の声

業界では「無理だ」と言われていた難問に、私たちがアタックを開始したのは4年前のこと。その後、テキスポートPEELの合成と処理方法の開発に2年、さらに量産化のための技術開発には1年半の時間を費やしてきました。

お客さまからは、試作品の段階ですでに高い評価を頂戴し、「早く出荷してほしい」とのご要望をいただいていたのですが、ようやく2007年の春から本格的に量産できる体制が整いました。

テキスポートPEELは、他の薬剤との併用や処理方法を工夫することで、オリゴマー除去以外にもさまざまな用途に使うことができるでしょう。

大きな可能性を秘めたこの製品を、じっくりと育てていきたいと思っています。
question

オリゴマーってなに?


新開発 オリゴマー除去剤“テキスポートPEEL”とは?

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Answer
オリゴマーってなに?

ポリエステルは私たちの暮らしのありとあらゆる場面で使われる、馴染み深い繊維です。ファッション用品、下着やスポーツ用品、工業や医療などでも幅広く使われています。

ポリエステル繊維は、イギリスで1950年から製造開始されましたが、以来半世紀以上にわたって解決できない「悩み」を抱え続けてきました。「染色工程」で発生する物質「オリゴマー」、これをいかに除去するか――多くの研究者や企業がそのテーマに挑んできました。しかし今日まで誰も、決定打となる解決法を見つけ出すことはできなかったのです。

【染色前と染色後のポリエステル繊維 】

染色前
 
染色後 (130℃×30分)
機械の汚れ
オリゴマーはポリエステルを合成するときの副生成物で、現在の合成技術では混入を避けることが出来ず、ポリエステル繊維の中には必ずオリゴマーが含まれています。染色時には、このオリゴマーが表面に現れ、様々なトラブルを引き起こします。
「染色」は、熱した染料液の中に糸や布を浸して染め上げます。高温・高圧状態にすることで繊維を膨潤(※)させ、開いた繊維のすき間に染料の分子を入れ込むのです。その後冷やすことで繊維のすき間が閉じ、色の分子が閉じ込められ色落ちしない糸や布ができ上がる――これが「染色」のメカニズムです。
ところが繊維が膨潤した時、ポリエステル繊維の中に閉じ込められていたオリゴマーが開いた繊維のすき間から表面に出て来てしまいます。
(※)膨潤(ぼうじゅん)=繊維の空隙を広げること

【 発粉の原因 】

「影斑」や「発粉」の原因は主に オリゴマーの
残留 によるものです! 

表面に付着している
オリゴマーを
除去することが必要!!
繊維のすき間から出てきたオリゴマーは、糸や布の表面に白いホコリのように付着します。糸に付着すれば粉を吹いたような状態になり、汚れや糸切れを引き起こします。布に付着すれば染めムラの原因となり、製品の品質を著しく劣化させてしまいます。オリゴマーの付着度合いによって製品のグレードが決まり、ひどいものは破棄しなければなりません。このようにオリゴマーは品質の悪化や生産性に影響を及ぼしてしまう頭痛の種なのです。
手についたオリゴマーの粉末
手についたオリゴマーの粉末

これまでは、

・ オリゴマーが出にくいアルカリ染色という方法で染める
・ 染色時にオリゴマーの出現を抑制する薬剤を添加する
・ 染色時にオリゴマーが繊維に付着しにくくする薬剤を添加する

――などの方法で対処していました。


けれどもアルカリ染色では、使える染料が限られており、自由な色に染められない。品質も安定しない・・・などの問題点がありました。また分散剤などの薬剤を使っても、オリゴマーの発生を十分に抑制したり、除去することはできませんでした。
「オリゴマーは必ず出るもの。出れば洗う。洗っても落ちなければ、捨てる」・・・これがこれまでの対処法でした。

近年では、製糸方法として生産性の高い「高速紡糸法」が採用されるようになっています。ところがこの方法でつくられた糸は、従来の方法でつくられた糸に比べオリゴマーが出やすい糸になってしまいます。また海外でつくられた糸や、ペットボトルをリサイクルした糸を使う機会も増えており、これら輸入糸や再生糸もオリゴマーが出やすい糸です。

このように年とともに「オリゴマー問題」は深刻化しており、精練・染色業界では大きな問題となってきています。
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新開発 オリゴマー除去剤“テキスポートPEEL”とは?

従来のオリゴマートラブルへの対処方法は、主に二つでした。

1. オリゴマーの発生を抑える
2. 発生したオリゴマーが繊維に付着しにくくする

日華化学では、これらの方法とはまったく違うやり方で、オリゴマートラブルにアプローチしました。それは、
「発生し繊維表面に付着したオリゴマーをはぎ取る」という方法です。
“peel(ピール)=皮をむく、引きはがす”という、これまでにないまったく新しい概念で開発した製品、それがテキスポートPEELです。

テキスポートPEELの主成分はアニオン系ポリマー。
製品は液状で、染料とともに染色機に入れて使う。
1. 染色時に、テキスポートPEELを染料といっしょに染色機に投入
2. 高温・高圧化し、繊維が膨潤※すると、繊維内部からオリゴマーが表面に出てくる
3. 出てきたオリゴマーが、繊維表面に付着
4. PEELが繊維表面に貼り付き、オリゴマーを取り込む
5. 冷却時には、オリゴマーを取り込んだPEELが繊維表面からはがれる
6. 排液とともに流れる
(※)膨潤(ぼうじゅん)=繊維の空隙を広げること

【 テキスポートPEELのメカニズム 】

繊維上に残留するオリゴマーの量を、半分〜3分の1に低減することができました。
染色浴でのオリゴマー除去効果を、生地に残留しているオリゴマー量にて確認
<試験布> ポリエステルサテン布
<試験条件> 染色 ミニカラー130℃×30分  (B.R.=1:15)
分散染料
80%酢酸
分散剤 RM-340E
オリゴマー除去剤
α%o.w.f.
0.4g/l
0.5g/l 
3.0%o.w.f.

生地に残留しているオリゴマー量が低減しており、オリゴマー除去効果が確認できた。
排液中のオリゴマーの量が約7.5倍になりました。
染色浴でのオリゴマー除去効果を、 処理浴の状態にて確認
<試験条件>
上記条件と同じ。
ただし、染料は使用せず。

処理浴の状態から、PEELのオリゴマー除去効果 および分散効果が認められます。

浴中オリゴマー量
15mg 
浴中オリゴマー量
113mg 

テキスポートPEELは、繊維に付着したオリゴマーを除去するだけではありません。他にも次のような効果を発揮することが明らかになっています。

1. 染色機、熱交換器の汚れを防ぐ
缶体の洗浄回数を低減し、生産性アップに貢献する

2. 精練不足により、繊維表面に残留した油分や糊剤を
引きはがし、染色トラブルを防ぐ

3. 染料、紫外線吸収剤や防炎剤などの併用薬剤の付着汚れを
引きはがし、カス汚れを防ぐ

オリゴマー付着防止効果を、缶体に付着するオリゴマー量にて確認 (現場試験)
<ラッパ管>
PEELなし PEELあり 3%o.w.f
オリゴマー付着量 469.9 mg オリゴマー付着量 70.8 mg
缶体に付着しているオリゴマー量が低減しており、付着防止効果が確認できた。
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